幼稚園や学校でお子さんが服につけて帰ってくることもある絵の具。絵の具ぐらいなら洗濯機にまわせば落ちると思いきや、案外落ちない?!と感じる方も多いのではないでしょうか。
今回はそんな絵の具の汚れやシミの落とし方を紹介します。
絵の具が洗濯しても落ちない原因

絵の具は大きく「顔料」と「バインダー」で組成されています。
「顔料」とは水や油に溶けない色の粉末のことを言います。色の粉だけではキャンバスや紙には定着しないため、糊剤の役割をするバインダーを混ぜることで絵の具が定着するようになります。
バインダーは展色材(てんしょくざい)とも呼ばれることもあり、このバインダーによって水彩絵の具などの絵の具の種類が決まります。
水彩(水性)絵の具だから簡単に落ちると思っていたのに、いつもの洗濯だけで落ちないのはこのバインダーが原因だったのです。
絵の具の種類別落とし方や洗濯方法

いずれの絵の具でも顔料は同じものですが、先程紹介したバインダーの違いがここでの落とし方のポイントになります。それぞれの絵の具別に適したアプロー方法を紹介していきます。
ただし落としたい汚れだけでなく、落とす衣類の素材も重要です。家庭で洗えるかどうか事前に確認をしましょう。特に制服のブレザーやプリーツスカートなどは要注意です。
それ以外でも失敗できない大切な衣類はクリーニングに出すことをおすすめします。家庭で洗うことのできるシャツやスモックや体操服でも、色落ちや生地を傷めてしまうリスクもありますので十分注意しましょう。
洗濯表示を確認して以下のように桶に×マークであれば家庭では洗えませんのでクリーニング店に相談しましょう。

「家庭での洗濯禁止」
水彩絵の具の落とし方や洗濯方法
水彩(水性)絵の具のバインダーは「アラビアゴム」というアカシヤ科の樹木からとれる天然の樹脂です。水彩絵の具は水に溶かして紙に描くことができるので幼稚園から小学生を中心によく使われる絵の具になります。
水彩絵の具であっても水で洗えば簡単に落ちるというものではないので侮れません。
絵の具を固めて定着させるアラビアゴムの接着力で、服に付いてしまうと生地の表面に絵の具を固着させてしまい落ちにくい汚れとなってしまいます。
早い段階で処置できる場合なら、まずはご自宅にある洗濯洗剤や固形石鹸で擦り洗いをしてみましょう。
それでも落ちない場合や時間が経過した場合は、昔ながらの炊いたお米を使って落とす方法を紹介します。
■準備するもの
- 消毒用アルコール(ジェル)
- 液体洗濯洗剤
- ごはん(炊いたお米)
- ヘラ(歯ブラシ)
■洗濯方法
樹脂が含まれている落ちにくい汚れには消毒用のエタノールが有効です。液体洗濯洗剤に加えることでまずはバインダーを溶解します。液体洗濯洗剤はいつも使用しているものでOKです。
お子様の上履きに絵の具が付くこともよくありますが、塩化ビニールが使われている場合はその部分へのアルコールの使用は避けましょう。劣化の恐れがあります。
ヘラや歯ブラシを使って生地に押し込むように塗り込みましょう。お米のセルロースの粘りが顔料を吸着する働きがあります。手でもみ洗いでもOKです。
ごはんの代わりに文具のでんぷん糊や、天然成分(でんぷん)の洗濯糊の使用も可能です。
ただし、歯磨き粉の研磨剤の力で顔料をかき出す方法もありますが、歯磨き粉の粒子も小さく繊維の奥に入り込んでしまうとまた別の汚れとなってしまうためおすすめはできません。
すりつぶしたお米が繊維に残らないようにしっかりすすぎましょう。絵の具の落ち具合を確認してまだ残っていれば、2の工程を繰り返して下さい。
ある程度落ちれば普段通り洗濯をしましょう。
油絵絵の具の落とし方や洗濯方法
油絵の具は名前の通りバインダはー「油」を使っています。その油は「乾性油」というもので空気中の酸素によってゆっくりと固まっていきます。
その特徴から油絵具はこすったり、揉んだりすることで汚れを広げてしまいやすいため、洗濯中に悪化させないように注意しましょう。
筆を洗う筆洗油やベンジンなど使う方法もありますが、今回はどのご家庭にもあるものを使って落とす方法を紹介します。
程度の軽い汚れであれば、固形石鹸を塗布してつまみ洗いをしてみましょう。それで落ちない汚れやべっとり絵の具がついてしまった汚れは以下の方法を試してみて下さい。
■準備するもの
- 食器用中性洗剤
- 歯ブラシ
- タオル
- 固形石鹸(必要に応じて)
- 洗面器(必要に応じて)
■洗濯方法
この時、服は裏返しにしておきましょう。油絵具のついている面を表にしていると汚れを広げてしまう可能性があります。
油汚れは油で落とす方法が効果的です。そのためクレンジングオイルを使う方法もありますが、肌につけるものなので溶解力は高くはありません。
油汚れに強く、衣類へのダメージも少ない食器用中性洗剤がおすすめです。
絵の具を下のタオルに移していくイメージで優しくトントンしましょう。歯ブラシや綿棒などを使うと便利です。
お湯をシンクや洗面器にはっておきましょう。落ち具合を確認してまだ絵の具が残っていれば、あとは固形石鹸を使ってもみ洗いをして下さい。
普段通り洗濯をしましょう。
アクリル絵の具の落とし方や洗濯方法
アクリル絵の具のバインダーは、「アクリル樹脂(アクリルエマルジョン)」が使われています。
その特徴としては、水彩絵の具のように水で溶いて使う方法は同じでありながら、紙やキャンバスのみでなく、木や石や布など幅広い素材に描くことのできる汎用性の高さがあります。
また、アクリル樹脂はプラスチックの一種であることから独特のツヤのある仕上がりも得られます。
絵の具としてはとても魅力的なものですが、服についてしまうと一番落ちにくいのがこのアクリル絵の具でもあります。
特にアクリル絵の具のメリットである速乾性がとても厄介で、乾燥すると同時にアクリル樹脂が顔料を保護して耐水性になるため水に溶けない難しい汚れとなります。
それでもご自身で挑戦するのであれば、「水彩絵の具の落とし方」と同様に樹脂を溶解する方法で消毒用エタノールを使って試してみて下さい。
除光液で落とす方法もよく紹介されていますが、これも除光液に含まれる「アセトン」という成分が樹脂を溶解するためです。
ただしアセトンは素材によっては繊維を溶かしてしまう危険性があります。あまり絵の具を使用するシーンで着用しているとは考えにくいですが、「アセテート」や「トリアセテート」の素材には使用できませんので注意しましょう。
基本的には水彩絵の具と同じように、樹脂を溶解しながら顔料を剥がす落とし方にはなります。
この顔料を剥がす方法として、歯磨き粉やクレンザーや水に溶けにくい重曹の性質を利用した研磨作用でかき出す方法もありますが、繰り返し擦ることでかえって顔料の粒を繊維の奥へすり込んでしまうことにもなりかねません。
また、汚れを削り取るという研磨剤を使う方法は衣類にダメージを与えてしまいやすく、歯磨き粉やクレンザーの粒までも繊維に残りやすいため使用する場合はそのリスクも頭に入れておきましょう。
時間が経った絵の具の落とし方や洗濯方法
時間が経過してしまうと顔料の塊となり頑固に落ちない汚れとなってしまいます。ここでは専用の洗浄剤を使用する方法を紹介します。
■ターレンス スーパークリーナー

出典「TALENS」
油絵具、アクリル、各種絵具類、版画インキ等あらゆる画材による汚れを落とす油彩画用液(洗浄液)です。
強い洗浄力を持ちながらも、水溶性・非石油系で嫌な臭いや火気引火の危険がなく、日本食品分析センター試験で「無害化作用99%」が実証された環境にも優しいクリーナーです。
衣類にも使用できますが、まずは目立たないところでテストしてから使用することをおすすめします。
使い方は不要なタオルを下に敷いて、布にクリーナーを付けて上からたたきます。汚れの範囲が広い場合は、クリーナーを塗り込んでもみ洗いをしましょう。
数百円で購入できるミニボトルサイズもありますので試しやすいのもポイントです。
絵の具の染み抜きや落とす方法

これらの洗い方でやってみても落ちない場合、染みが残る場合は酸素系漂白剤でのつけ置き洗いを試してみましょう。
■準備するもの
- 粉末洗濯洗剤
- 酸素系漂白剤
- 桶
- 歯ブラシ(必要に応じて)
■洗濯方法
桶は洗面器やシンクでも代用できます。お湯は40℃を目安にしてください。
手でもみ洗い又は歯ブラシで擦り洗いをしましょう。
液温が下がっていたらお湯を張り直すか、足して40℃を保つようにしましょう。漂白力を維持するためにつけ置く間も温度が下がらないように蓋やラップをしておくと効果的です。
落ち具合を確認しましょう。まだ色素が残っている場合はつけ置く時間を調整してみてください。ただし2時間以上にならないように注意しましょう。
普段通り洗濯をしましょう。
絵の具のクリーニングや染み抜き方法と料金相場

絵の具は意外と落ちにくく、その落とし方も手間がかかる上にかえって事態を悪化させてしまうリスクもあります。衣類の素材、絵の具の範囲や程度によっては潔くプロにお任せすることをおすすめします。
バインダーによっては有機溶剤で洗うドライクリーニングは油汚れを得意とするため、ドライクリーニングである程度落とせることもあります。
ただ、時間が経過した絵の具はやはり落ちにくいため、染み抜きになる可能性が高いでしょう。
染み抜きには汚れだけでなく、落とす衣類の素材も重要であるため、専門知識の豊富な職人が見極めながら一つ一つ丁寧に汚れを剥がす作業を行ってくれます。
その際、絵の具の種類を伝えておくとその組成に合った落とし方がスムーズにできるので、分かる範囲で事前に伝えておくことも大切です。
価格については汚れの範囲や程度によりますが目安としては3,000円~5,000円程度。もちろん状態によってはそれ以上になるケースもあります。
絵の具は染み抜き無料とうたっているような前処理で簡単に落とせるシミではないため、染み抜きを専門とするお店や、染みがとれたら料金が発生するような報酬制のお店の方が信頼できるでしょう。
染み抜きはお店の技術の差が出やすい分野になりますので、お店選びも慎重に行うことをおすすめします。
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