トリアセテートは、その光沢感と流れるような落ち感で多くのファッション愛好者を魅了しています。
ですが、その美しい外観を保ちながら汚れを落とすことは、適切な知識と注意が必要です。
そこでこれから、トリアセテート製品の洗濯方法と染み抜きのプロセスをご紹介。
あなたの大切な衣類を長持ちさせ、常に最高の状態を保つための秘訣をこれからお伝えしましょう。
トリアセテートとは
トリアセテート、その名前が示す通り、化学の世界で「トリ」という言葉は「三つ」を意味します。
ここでいう「三つ」とは、セルロースという自然界に豊富に存在する物質に、酢酸を三つ結びつけた形態を指しています。
トリアセテート素材は、衣服だけでなく、カーテンや家具の張り地としても使われており、その滑らかで光沢のある外観と、メンテナンスのしやすさから、多くの人々に愛されています。
メリット
- 適度な吸湿性と放湿性: 体からの湿気を程よく吸い取り、外に放出する能力があるため、快適な着心地を提供します。
- 保温性: 保温性があるため、涼しい天候でも暖かく過ごせます。
- 軽さ: 軽量であるため、着用しているときの負担が少なく快適。
- 絹のような光沢: 高級感ある外観で、フォーマルな服装にもカジュアルな服装にも適しています。
- シワになりにくい: 弾力性があるため、シワになりにくく、常にきれいな状態を保ちやすいです。
- 染色性: 色が豊富で鮮やかに染め上がり、色持ちも良いです。
- 熱可塑性: 熱を加えると形を作りやすくなり、冷却後はその形を維持するため、プリーツ加工などのデザインに適しています。
デメリット
- 溶剤に弱い: マニュキュアや除光液などの溶剤に接触すると素材が溶けてしまう可能性があります。
- 変色のリスク: 排気ガスなどに含まれる化学物質により色物が変色することがあります。
- アルカリ洗剤の使用不可: アルカリ性の洗剤によって光沢が失われるため、洗濯には注意が必要。
- 耐熱性の低さ: 熱に弱いため、高温の環境やアイロンがけには注意。
- 強度が低い: 強度が比較的低いため、引っ張りや摩擦に弱く、扱いには注意が必要です。
アセテートとトリアセテートの違い
似た名前の「アセテート」がありアセテートとトリアセテートは、どちらもセルロースを基本とした合成繊維で大きな違いはありませんが、以下に違いをまとめました。
アセテートの特徴
- アセテートはセルロースのヒドロキシル基のいくつかが酢酸によって置換されていますが、全てが置換されているわけではありません。通常、アセテートではセルロース分子のヒドロキシル基の約2つが酢酸で置換されています。
- アセテート繊維は光沢があり、絹のような手触りが特徴ですが、トリアセテートに比べるとやや弱い耐熱性を持ちます。
- アイロンをかける際には低温を使用し、熱によるダメージを避ける必要があります。
トリアセテートの特徴
- トリアセテートはセルロースのヒドロキシル基が3つ全て酢酸で置換されており、これが「トリ」という名称の由来です。
- アセテートより化学物質である酢酸の量が多い為、比較的吸湿・吸水性が低い。
両素材とも、ドレープ性が良く、光沢感があるためフォーマルな服装に適しており、それぞれが独特の特性を持ちながらファッション業界で重宝されています。
トリアセテートの洗濯での注意点

トリアセテートは耐久性がある素材ですが、洗濯の際にはいくつかの注意点を守ることが重要です。
以下のポイントを押さえることで、トリアセテート製品を長持ちさせることができます。
洗濯表示タグの確認
まず最初に、洗濯表示タグを確認しましょう。
トリアセテート製品は、ドライクリーニングを推奨するものも多いです。もし洗濯機での洗濯が可能な場合でも、その他のケア指示に従うことが重要です。
おしゃれ着洗剤を使う
強い洗剤や漂白剤は避け、トリアセテートに優しい中性洗剤またはおしゃれ着洗剤を選んでください。
衣服の色や質感を保つためにも、過度な化学反応を避けるためです。
水またはぬるま湯で洗濯
高温での洗濯はトリアセテート繊維にダメージを与える可能性があるため、水温は低めに設定しましょう。水または30度程度のぬるま湯が適切です。
手洗いモードで洗う
洗濯機を使用する際には、手洗いモード(弱水流モード)を選んで、繊維への負担を最小限に抑えてください。
洗濯の際には衣服を裏返して洗うことで、表面の摩擦によるダメージを防ぎます。
ゆすり洗いを心がける
手洗いをする際は、繊維を傷めないようにやさしくゆすり洗いをし、擦り洗いや強く絞る行為は避けてください。これにより、繊維の変形や破損を防ぎます。
タオルドライをして干す
洗濯後は、なるべく洗濯機の脱水機能は使わず、やさしく水分を押し出すようにして水を切り、タオルドライしましょう。
また、干す時は形を整えてから直射日光を避けて、陰干しするのがベストです。
タンブラー乾燥は避け、自然乾燥を選ぶことが大切です。
アイロン温度は中温〜低温に設定
もしアイロンがけが必要な場合は、生地に合わせた低~中温設定を使用し、間違っても高温設定での使用は避けてください。
また、生地に直接アイロンを当てるのではなく、当て布を使用することで熱による光沢の損失を防ぎます。
漂白剤やアセトンの使用を避ける
漂白剤やアセトン(除光液)などの有機溶剤はトリアセテートにダメージを与えるため、使用しないでください。
洗濯時のリスク

トリアセテートを自宅で洗濯する際に、以下のようなリスクが起きる可能性もあります。
色落ち・色褪せ
トリアセテートは美しい光沢を持つ素材ですが、その美しさは色褪せによって損なわれることがあります。
そのため、トリアセテートのアイテムを洗濯する際には、他の色の衣類と分けて洗うことが重要です。
混色や濃淡色の衣類と一緒に洗うと、色移りや色落ちのリスクが高まります。
特に初めて洗濯するときには、アイテムが色落ちしないか確認するため、他の衣類と一緒に洗わないようにしましょう。
毛玉
トリアセテート毛玉ができづらい素材ではありますが、お手入れ方法を誤ると毛玉が発生する可能性があります。
そのため、洗濯機で洗濯する際には、他の洗濯物と擦れないように気をつけましょう。
また、できるだけデリケートな洗濯コースを選択すると、毛玉の発生を軽減できます。
トリアセテートの洗濯方法

トリアセテートを洗濯する際は、まず洗濯タグを確認しましょう。
![]() | 桶に30下に横棒2本は液温は30℃を限度とし、洗濯機で非常に弱い洗濯ができる |
![]() | 桶に手は40℃を限度に手洗い可能 |
![]() | 桶に×は家庭での洗濯禁止 |
多くの場合、トリアセテートは水洗いが禁止されており、代わりにドライクリーニングが推奨されています。
ですが、誤って水洗いをしてしまった場合は、速やかにクリーニング店に相談しましょう。
水洗いによって素材を傷めることがあるため、迅速な対応が必要です。
水洗い不可のトリアセテート製品を誤って洗濯してしまった場合、次の手順で対応することが推奨されます。
- 速やかに対処する
誤って洗濯してしまったことに気付いたら、すぐに洗濯機から取り出しましょう。水に長時間さらされると、繊維が損傷するリスクが高まります。 - 形を整える
まず、衣類の形を優しく整えます。ねじったり強く絞ったりせずに、余分な水分を押し出すようにしてください。生地が伸びたり型崩れしたりするのを防ぐためです。 - 平干しする
洗濯物を平らな面に置き、空気が十分に流れるようにして陰干しします。直射日光や高温にさらすと、色褪せや収縮の原因となる可能性があるため避けましょう。 - アイロンは慎重に
乾燥後、衣類にしわができていたら、トリアセテートに適した低~中温でアイロンをかけてください。必ずアイロンの温度設定を確認し、必要であれば当て布を使用して生地を保護してください。 - 結果を確認する
乾燥後、生地にダメージがないかを確認します。特に縮みや形状の変化、色褪せ、強度の変化に注意しましょう。 - 専門家に相談する
大きな損傷が見られる場合は、専門のクリーニング店に相談しましょう。
トリアセテートの洗濯におすすめの洗剤
トリアセテートの洗濯には、おしゃれ着洗剤が適しています。
おしゃれ着洗剤は、トリアセテートの繊維を傷つけず、優しく洗浄します。
![]() | ■アクロン フローラルブーケの香り 洗浄成分に浸透性の高い界面活性剤を採用。 トリアセテートを洗濯する際の弱い水流でも すばやく繊維に浸透して汚れをすっきり落とします。 また、「シワ・ヨレ」「型くずれ」「縮み」 「色あせ」「毛玉予防」をケアしながらやさしく洗うので 衣類の鮮やかな色や淡い色合いを守り、シルエットもキープ。 |
![]() | ■エマール リフレッシュグリーンの香り ダメージリペア技術でトリアセテートのセンイを 内側から補修。洗濯しながら、伸びやヨレを戻します。 リフレッシュグリーンの香りで洗濯中も癒されます。 |
トリアセテートの洗濯機での洗い方
トリアセテートは適切な方法で洗濯することが大切です。
もし洗濯タグを確認し、洗濯機使用が許可されている場合には、以下のステップに従って洗濯してください。
- おしゃれ着洗剤
- 洗濯ネット
洗濯機での洗濯がOKの場合でも、温度や洗濯サイクルに関する指示があるかもしれないので、必ず確認しましょう。
これにより洗濯時の摩擦や引っかかりを防ぎ、生地を守ります。
また、色褪せや色移りを避けるため、色や素材が似ている衣類同士で洗濯します。
洗濯コースは、トリアセテート繊維にやさしいコースを選びましょう。
また、洗濯機では脱水しない。
洗濯機から取り出したら、押して水気を取った後タオルに挟みましょう。
洗濯機で洗う際には、これらのケアの手順を守ることで、長く愛用できるようになります。
トリアセテートの手洗いでの洗い方
トリアセテート製品は、基本的に手洗いを推奨しています。
- おしゃれ着洗剤
- 洗面器
- 水またはぬるま湯
おしゃれ着洗剤を汚れ部分に少量つけて、やさしくつまみ洗いをする
熱すぎる水は繊維を傷める可能性があるので注意
強くこすると繊維が傷むので、やさしく扱ってください。
洗剤が残らないようにしっかりと洗い流す。
繊維が傷む原因となるので、強く絞りすぎないように注意。
トリアセテートの黄ばみや汗染みの染み抜きと漂白
トリアセテートは熱や摩擦に弱く、特に塩素系漂白剤によるダメージが大きいため、使用は避けなければなりません。
黄ばみや汗染みの染み抜きには、以下のような手順で液体の酸素系漂白剤を使用することが推奨されます。
染み抜き方法
黄ばんだ部分や染みに直接、おしゃれ着洗剤を塗布。柔らかいブラシや布で優しくたたくようにして汚れを浮かせましょう。
製品ラベルにある推奨の濃度比に従いましょう。
処理した部分を漂白剤の溶液に入れ、しばらく浸します。通常は数十分から1時間程度が目安ですが、製品の指示に従ってください。
長時間漬け置きし過ぎないように注意。
注意点
いずれの処理を行う前に、目立たない部分でテストをして、変色や素材の損傷がないことを確認してください。
また、漂白剤は、素材に合わない場合や色柄物には色落ちの原因となることがあるのでこちらも注意。
通常の洗濯で落ちないトリアセテートの臭い取り
トリアセテート製の衣類に付着した頑固な臭いは、日常的な洗濯だけでは取り除きにくいことがあります。
臭いの原因となるのは、体から分泌される汗や皮脂、日常の汚れ、大気汚染、料理のニオイやタバコの煙などです。
そこで、臭いを取り除くための改善策をご紹介。
風通しの良いところに干す
臭いがついた衣類を風通しの良い屋外や室内で陰干ししてください。
新鮮な空気と太陽の光(直接当たらない程度で)が、臭いを改善できることがあります。
消臭スプレーを使う
ドラッグストアなどで購入できる、消臭スプレーを使用することも一つの方法です。
ただし、トリアセテートは化学物質に反応しやすい素材なので、衣類に直接スプレーする前に、目立たない部分でテストをして素材に害がないことを確認してください。
液体の酸素系漂白剤を使う
先程、染み取りで紹介した液体の酸素系漂白剤は、色柄物でも安心して使えることが多く、臭いの原因となるバクテリアや汚れを分解するのに効果的です。
衣類を洗う際、指定された量の酸素系漂白剤を洗濯機に入れて「トリアセテートの洗濯機での洗い方」を参考に洗濯してみてください。
また、洗濯後はすぐに衣類を乾燥させることが重要です。湿ったまま放置すると、さらに臭いが発生する原因となります。
クリーニング店へ依頼する
こうした自宅での処理で臭いが取り除けない場合は、専門的なクリーニング店に依頼するのが最善です。
プロの技術で、素材を傷めずに臭いを取り除いてくれます。
トリアセテートの乾燥とシワ取りやアイロンの掛け方

乾燥方法
トリアセテート製品は、平干しして自然乾燥させましょう。
平らな面に広げることで、繊維に均一に空気が触れ型崩れを防ぎます。
また、直射日光はトリアセテート繊維を劣化させる原因となるので、陰干しすることで衣類を直接的な熱や光から守ることができます。
シワ取り
洗濯不可のトリアセテートのお手入れ方法

洗濯不可と表示されているトリアセテートの衣類については、水や洗濯機による洗濯は避けなければなりません。
そのため、以下のお手入れをすることで、洗濯不可のトリアセテート製品をキレイに保つことができます。
風通しの良いところに干す
衣類を風通しの良い場所に陰干ししてください。湿気を取り除き、新鮮な空気が臭いを軽減させます。
部分洗いをする
汚れが目立つ部分がある場合は、おしゃれ着洗剤を薄めた水で湿らせた布を使い、部分洗いをしましょう。
ただし、素材を傷めないように優しくたたくか、軽く叩くようにしてください。
消臭スプレーを使う
衣類用の消臭スプレーを使い、お手入れすることができますが、先述したように、まずは目立たない部分でテストしてから使用してください。
クリーニング店へ依頼する
洗濯タグに「ドライクリーニングのみ」と指定している場合は、プロのクリーニングサービスに衣類を持って行くのが最も安全です。
トリアセテートの毛玉取り

毛玉ができる原因は「摩擦」や「静電気」です。
日常生活で摩擦をなくすことは難しいですが、気をつけながら過ごすことも毛玉を軽減する方法のひとつでもあります。
もし毛玉ができた場合は、毛玉取り器を使ってやさしく取り除きましょう。
トリアセテートの静電気対策

トリアセテート素材の衣類を快適に着用するための静電気対策について、いくつかの実用的な方法をご紹介します。
静電気防止スプレー
静電気防止スプレーを吹きかけることで、静電気の発生を抑制できます。
スプレーは衣類に直接吹きかけるか、着る前に空中で霧を吹きかけてから通り抜ける方法もあります。
肌を保湿する
肌が乾燥していると静電気が発生しやすくなるので、保湿ローションなどで保湿することで、静電気の発生を抑えることができます。
部屋の加湿
室内の湿度を適度に保つために加湿器を使用すると、静電気が発生しにくくなります。
柔軟剤を使う
トリアセテートを洗濯する際に、静電気防止効果のある柔軟剤を使うことで静電気を軽減することができます。
素材の組み合わせ
コーディネートする際に、できるだけ天然繊維の衣類を選ぶことで静電気の発生を避けることができます。
上記を実践することで、トリアセテート製品の静電気を抑えることが期待できます。
ただし、製品によっては特定の静電気防止剤の使用を推奨していない場合もありますので、使用前には必ず衣類の取り扱い表示を確認しましょう。
トリアセテートのクリーニング相場

トリアセテート製の衣類のクリーニング料金は、地域、クリーニング店のサービスレベル、衣類の大きさやデザイン、そして汚れの程度によって異なります。
一般的な相場については以下の通りです。
- トリアセテートのシャツやブラウス: 500円〜1,200円
- トリアセテートのパンツやスカート: 600円〜1,500円
- トリアセテートのドレスやアウター: 1,000円〜3,000円以上
ドレスや特別な装飾が施されたアイテム、大きなサイズの衣類、または特殊なクリーニングを要する場合(たとえば、装飾が手作業で取り外しが必要な場合や、特殊な汚れがある場合)は、さらに高額になることがあります。
料金が低いクリーニング店では基本的なサービスのみを提供しており、より高い料金を取る店では、繊細な素材や特殊なアイテムに対応した高度な技術や追加サービスを提供していることがあります。
正確な料金を知るためには、実際にクリーニングを依頼したい地域のクリーニング店に直接問い合わせしましょう。
また、複数の店舗の価格やサービスを比較することで、最適なクリーニングサービスを選ぶことができます。
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